ご挨拶

 


 慶應義塾体育会航空部 部長 安田淳


 

グライダーの飛行は、航空機の中でも独特の魅力ある世界です。離陸のためにウインチとワイヤーで牽引されるときの加速感は、意外なことにとても柔らかくスムーズです。ところがあっという間に機首が引き起こされると前方は一面の「空」、その上昇の力強さにはとてもたくましいものがあります。そうして牽引ワイヤーが切り離されるや、長くて美しい主翼が生み出す静かでやさしい浮遊感はまさに風に乗っていることを実感させてくれます。私はアマチュアパイロットとしてエンジンのある軽飛行機を操縦しますが、グライダーというエンジン音のしない静かな飛行機の世界はとても気持ちいいものです。

航空部はこのグライダーを用いて競技に参加し、これまで数多くの優れた成績を収め、「陸の王者慶應」ならぬ「空の王者慶應」の名を全国に轟かせてきました。その歴史と伝統は、まもなく100年に達しようとしています。

もちろん飛行機で競技を行うには、数限りなくやるべきことがあります。操縦技術を会得し上達させるのはもちろんのこと、航空力学、機体構造、航空気象、航法、航空法規などをきちんと学ばなければなりません。またグライダーはエンジンを持たないだけに、一人で飛ばすことはできず、飛行するためにはとても多くの人々の協力と団結が不可欠です。わが航空部は、部員諸君の努力と共に、多くのOB・OG諸氏の献身的な支援と指導によってここまで成長してきました。経済的支援のみならず飛行訓練や機体整備も、公的資格を持つ卒業生たちが支えてくれています。

そして常にその基盤となるのは「安全」です。「安全」を確実なものとし、その上で飛行活動を展開しつつ必ず「安全」に立ち返る繰り返しは、航空機の運航にとって至上命題であり絶対のものです。

こうして、一人でやるべきことからチームとして取り組むべきことまでを的確に積み上げて競技に勝利するという航空スポーツの経験は、学生時代をより有意義にするとともに、それは社会に巣立ってからもさまざまな助けとなってくれるでしょう。

これからも航空部は、このような学生諸君とOB・OG諸氏によって成長し続けます。