慶應義塾體育會航空部 最高顧問 吉田正克
一言ご挨拶申し上げます。
我が部の歴史は遠く昭和5年(1930年)に遡り、令和2年(2020年)で創部90年を迎えました。そして、現在は我が国の学生航空を代表するトップレベルの活動を行っており、これを支える基本精神についてご説明します。
慶應義塾體育會には“スポーツが与える3つの喜び”という訓えがあります。即ち、
1. 練習を通じて不可能を可能にするという事を知ること。
2. フェアプレーの精神を養う事。
3. 生涯を通じての友を得ること。
これは、小泉信三元塾長が遺された有名な言葉ですが、我々航空部こそこの3つの訓えを体現できる最適な部であると確信しています。現代は、人間が空を飛ぶという事自体は航空機の発達により何の困難さもなく行えます。しかし、あなたが、自分自身で自由に鳥のように空を飛ぶことは不可能です。しかし、航空部に参加し部活動を通じてそれを可能にできます。動力を持たないグライダーで練習を積み一人で空を飛ぶだけでなく、様々な競技に参加することにより、スポーツのだいご味である“競技に勝つ”喜びを味わうことが出来ます。幸い、我が部は対外試合に於いては学生全国No.1の戦績を残し学生航空の頂点に立つことを次第の誇りとしています。その結果、毎年のように卒業式に於いて小泉信三記念体育賞受賞の栄に浴しています。まさに、“練習は不可能を可能にする”ことです。
また、練習を行う空という自然界では、自然のルールに従い自分自身で計画、判断、決断をし、自分で責任を取る事で世の中のごまかしや要領、言い訳などが全く通用しない世界に生きることになります。まさに、フェアプレーの精神を涵養するにはまたとない修業の場といえます。
航空部は、合宿での飛行訓練、競技大会や日常での部活動を通じて部員が一緒になって生活します。そして、空中でマンツーマンで行う指導は師弟の繋がりを超えた心の通い合った密度の濃いものとなり、同時に、飛行を支えるために苦楽を共にした仲間同士の友情は生涯の友として一生を通じての貴重な財産となります。平成世代だけでも既に200人近いOBOGを輩出していますが、これらの先輩たちが社会の各方面で活躍している姿が、現役諸君に寄せる熱い思いと共に“航空部ファミリー”を形成しています。これが塾の目指す “社中一体” の具現化です。
我々は、この素晴らしい世界を共有できる仲間が一人でも増えるよう皆さん方をお待ちしています。